『くみたて』.田中 達也 作.福音館書店
本記事では、田中達也さんの絵本『くみたて』(初版年月日2022年06月05日 福音館書店)のレビューをしていきたいと思います。
ミニチュア写真家としても知られる田中達也さんのとっても可愛らしく、そして細部の細部まで作られたミニチュアの世界。そして、日用品がいろいろなものに大変身する奇想天外な発想力。
一度読めば、まるで自分たちもミニチュアの世界で生きているような感覚を体験できる。そんな見ても読んでも楽しすぎる絵本です。
『くみたて』のおすすめポイント!
『くみたて』のおすすめポイント!

ミニチュアと写真のクオリティに誰もが気に入るのはもちろん、ガジェット系やプラモデル、ジオラマなどが好きな方にもおすすめ。レビューもぜひ最後までご覧ください。
『くみたて』のあらすじ
せんたくばさみやセロテープなど、私たちが日常的によく使う日用品。
みんなが知っている日用品をくみたてるは、ミニチュア世界のミニチュア作業員の方々。しかし、くみたてたあとの使い方は、私たちの世界とはまったく違うようで……。
『くみたて』を読んだ感想(魅力を語る!)
①:日用品にこんな使い方があったのか!そそられる作者の視点
いきなりですが、みなさんはせんたくばさみやセロテープを見たら、何を思い浮かべますか?
この質問がおかしな質問だと感じたら、この絵本をとても楽しめると思います。
普通だったら、洋服を干している風景や紙に貼り付けている様子を思い浮かべますよね。私もそうでした。
作中、はじめはバラバラのせんたくばさみが出てきて、可愛らしくも逞しいミニチュア作業員の方々が登場し、パーツを合わせ、くみたてていきます。
その様子に、私は「ああ、この『くみたて』というタイトルは、日用品をくみたてていくという意味なのか」と、それでも面白そうだとは思っていたのですが、少したかをくくっていました。
次のページ、そんな私は頬を叩かれます(今の自分が見ても叩きます)。
ミニチュア作業員の方々は、完成したはずのせんたくばさみに、なにやら思いを巡らせます。それから、表紙画像のように、なんとせんたくばさみは女の子のブランコに大変身してしまうのでした。
「え?」そう思ったときには、私はミニチュア世界の虜となっていました。
そんなのあり?となる、私たちの日常で当たり前にあるものの使い方。田中達也さんの本当にあっぱれな視点でした。
②:忘れてはいけない、こだわり感じる作品全体のクオリティ
作品に没入しすぎて、ついつい忘れてしまいがちですが、ミニチュア世界の圧倒的なクオリティについても語りたいです。
①では田中達也さんの視点について触れましたが、作品全体のクオリティも天下一。絵本の内容、細部の細部まで作りこまれたミニチュア、疑問形などを混ぜた言葉遣い、どれを見てもこだわりを感じます。
その中でも、私が特に注目したのは「写真の撮り方」でした。
田中達也さんが撮影している『くみたて』の世界。
作業員の方やそこで生活する人たちがバランスよく全体的に映っていながら、圧迫感などを与えない写真となっているのが本当にすごかったです。
また、何よりもすごいなと思ったのが、写真自体は全体的(世界的と言ってもいい)に撮られているはずなのに、不思議と、ミニチュアの世界で生きる人の目線になっている写真だというのが、言葉では表現できない感情になりました。
読んでいると自然に彼・彼女たちと同じ目線に立てることから、作品に没入しやすく、記事の冒頭で述べた「まるで自分たちもミニチュアの世界で生きているような感覚を体験できる」ことにつながっているのだと思います。
③:どんどん発想は広がっていく。ミニチュア世界の広がり
最後に、これもまた『くみたて』の魅力的な点の一つですが、ページが進むごとに作品の世界はとどまることを知らずに広がっていきます。
どのように広がっていくかというと、日用品だけではないのです。他にもさまざまなものが作品を彩ります。
私が特に好きだったのは遊園地。何が使われているか、ここでは秘密です。ぜひ、ご自身の目で確かめてみてください。
こうして振り返ると、ミニチュアの世界を見ながら読みながら、私の視点も少しずつ変わっているかもしれません。今、机の上にある定規が線を引くものではなく、何かの橋に見えたりするのです(田中達也さんの視点に比べると乏しい発想ですが)。
とにかく、広がるミニチュアの世界と比例するように、見て読むと私たちの世界も広がっていきます。
『くみたて』レビューのまとめ
『くみたて』のおすすめポイント!
絵本『くみたて』は一度読めば、まるで自分たちもミニチュアの世界で生きているような感覚を体験できる。そんな見ても読んでも楽しすぎる絵本でした。
ミニチュアと写真のクオリティに誰もが気に入るのはもちろん、ガジェット系やプラモデル、ジオラマなどが好きな方にもとてもおすすめな作品です。

読み終わったあと、ぜひもう一度、自分に「せんたくばさみやセロテープを見たら、何を思い浮かべますか?」と問いかけてみてください。答えが少し変わっていたらなんだか私も嬉しいです。
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