『たまごのはなし』.しおたにまみこ.ブロンズ新社
本記事では、しおたにまみこさんの【絵童話】絵本『たまごのはなし』(発行年月2021/2 ブロンズ新社)のレビューをしていきたいと思います。
シュールな笑いにつつまれながら、それでもなぜか私たち人間とつながる部分がある。
読むだけで、世界の見方や考え方が自然と変わっていく。大人にもおすすめできる素晴らしい絵本です。
『たまごのはなし』のおすすめポイント!
『たまごのはなし』のおすすめポイント!

何かおもしろい本はないか探している方はもちろん、今悩んでいることがある人などには特におすすめ。レビューもぜひ最後までご覧ください。
『たまごのはなし』のあらすじ
いつまでもキッチンの上で動かず、転がったままのたまごさん。
あるとき、そんな自分にどうして、と問うように「考えること」をはじめます。
それから飛びはねてみたり、回転してみたり、歩いてみたり(しかも超美脚で)。道中で出会うマシュマロさんと一緒に、キッチンのそとへ、思考をめぐる旅ははじまっていく……。
『たまごのはなし』を読んだ感想(魅力を語る!)
①:たまごさんの独特なキャラクター性
私が絵本の中でもっとも魅力的だと思ったのが、ずばり、主役であるたまごさんの「キャラクター性」です。
実はこの可愛らしいたまごさん、中身はちょっぴりひねくれたクセモノです。
例えば、たまごさんは作中、自分と同じように、まわりのたまごにも素晴らしい体験をさせようとして割ってしまったり、気に入らないものにはテープで口をふさいでしまうなど、なかなかにひどいことをします。
また、出会ういろいろなものたちに妬みのようなことを言われても、まったく気にしないどころか、ひねくれた答えで圧倒してみせます。
そんな、ちょっぴりひねくれた考え方を持ち、王様のような態度なのに、それを感じさせない潔さ。それらがまったく悪い面とならず、むしろ読み進めるごとにクセになっていきます。
私が思うに、これはたまごさんのことばの中に、普段の私たちが何となく抱えているもやもやや吐き出したい「物事の核心」がつまっているからだと思います。
ゆえに、どこか憎めず、ときにはうなずき、共感してしまう。
そして、まるで自分のことのように考えさせられる。たまごさんのお話を聞いているうちに、自然と私たちの心へ問いかけは始まっているのかもしれません。
この独特なキャラクター性がとっても魅力的でした。
②:絵から伝わる感情表現
内容の秀逸さはさることながら『たまごのはなし』は、一つひとつの絵だけを見ても楽しい作品です。
中でも私が注目したのは「特徴的な目と鼻と口の感情表現」です。
しおたにまみこさんの描くたまごさんたちの表情は、私たち人と似ていて、それがとってもリアルに描かれています。そのため、目が片方上がったり、口をとがらせたり。表情の描きを見るだけでたまごさんたちの感情が伝わってくるのです。
そのため、内容にも入りやすく、①で語ったような登場キャラクターの考えや感情にすっと共感することができます。
他にも、キッチン内とキッチン外の空間の使い方による印象の違いなど、さまざまな感覚を絵から受け取ることができ、素晴らしいです。
③:当たり前を新しい発見として見直すことができる!
最後に、作中で受け取ったさまざまな感情は、たまごさんたちの動きの注目へとうつります。
人間にとって、寝たり、食べたり、運動をして汗をかいたり……。これって普通のことですよね。しかし、たまごさんたちからすれば、それは素晴らしきこと。動きまで注目がいくと、今度は私たち人の当たり前を新しい発見として見直すことができます。
それは、今悩んでいることがある人、どこか変わらない毎日に退屈を感じている人などにとっては大きな救いとなるかもしれません。
『たまごのはなし』レビューのまとめ
『たまごのはなし』のおすすめポイント!
【絵童話】絵本『たまごのはなし』は読むだけで、世界の見方や考え方が自然と変わっていく。そんな絵本でした。
シュールな笑いにつつまれながら、自分もいろいろなことを考えてみたい。たまごさんのひねくれっぷりを堪能したいという方にとてもおすすめな作品です。

みなさんもぜひ、たまごさんのお話をよく、聞いておきましょう。その先に考える楽しみが待っていることを願っております。
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