詩:『雲と宙間と先とまた別の』|目指すはココを引き継いだ、ココではないどこか|創作

『雲と宙間と先とまた別の』アイキャッチ画像 詩・視覚詩

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『雲と宙間と先とまた別の』縦読みリンク

 或る昼、空を見上げたら

 雲の階層に気づいた

 手前は高速で、奥は音速に、思考の欠片は流れていく

 君たち二人が思い浮かぶ

 ありがとう。

 君たちの言っていた意味がやっとわかった

 僕が君たちのほうへ行けないこと

 君たちが僕のほうへ来られないこと

 それは、

 僕がココにいたから

 君たちがソッチにいたから

 そのままの意味だけど、そのままであることがようやくわかったんだ

 ありがとう。

 君と、君と、君たちだけの言葉はきっと、

 これでもう終わりになる。

 僕は

 君たち以外の

 僕に同じようにクレルその人たちを探しに、旅をしたくなった

 いつか遊びにおいで

 今度は、僕の世界に

 そしたらまた一緒になろう

 君たちのおかげだ

 ありがとう。

 雲の奥には空が見えた

 青い蒼い

 黒と白の宙間だった

 僕は学びを通した

 知識は、色を色と教えてくれた

     言葉を言葉と教えてくれた

     人を人と教えてくれた

 自分の心に穴があることを知った

 穴の先には逆三フラスコが見つかった

 底には汚いものと

         綺麗なものとが

 くっきり交互に溜まるんだ

 何もないのに苦しかった

       辛かった

       痛かった

 それがまた、僕らを区別する

 僕らを僕らと刻み込む

 宙間の先

 そこには黒い銀河があった

 透明が詠われていた

 無が詠われていた

 ねぇ、本当の本当にそうなのかな

 信じてあげよう

 信じてあげたい

 すべてが透けていても、

     僕らがどこにも落ちないで

        立ち続けていることを

        何も無かったとしても、

     遠くで繋がる誰かの声が

 この胸の内に聞こえることを

 そのとき

 透明の中にある色が、

 無の中にある有在が、

 信じたとき

 僕らの瞳に「気づき」としてやってくる

 ほら。見える?

 空には、こんなにも鮮やかな色が彩られていた

 ここからは独りよがりの皆よがり

 僕はさらにもう一歩

      もう一歩、新しく行きたい

 旅だ

 あてのない旅をしたい

 また別の。

 真の透明へ

 誠の無へ

 すべてに触れない場所を目指して

 僕は、別の、何かになる

 独りの皆も行こう

 僕と一緒に、視に行こう

 そこで初めて語り合おう

       わかち合おう

       涙し合おう

 僕たちは仲間だった

 独りが独りではなくなっていく

 弾けて打ち解ける

 永い果て

 雲と宙間と先と

        また別の――


       雲と宙間と先とまた別の

2022年11月22日 執筆(2025年3月29日 改稿)

         著者 八坂零(やさかれい)

         掲載 芸術の星座

 最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

 いかかだったでしょうか。『雲と宙間と先とまた別の

 こちらの詩は、おそらく語り部の実体験から始まった詩だと思われます。ふと空を見上げていると、雲にはちゃんと上と下がある。私にも良く、同じことを感じるときがあります。

 詩の作中では、空は雲を突き抜けて、どんどん上へ上へと昇っていきます。雲を越え、空を越え、宇宙の先へ……。

 私なら、きっと宇宙までで、想像は終わってしまうと思います。ですが「僕」はさらにその先を見ている。さらには題名の通り、先とはまた別のどこかを目指している。

 みなさんは最後の「また別の」とは、どこだと思いますか?

 その答えに、みなさんの目指すべきどこかはあるのかもしれません。

 すーっと透き通るような空気を体感することはできましたでしょうか。ぜひ、眠れない夜に。夜が恋しくなった朝・昼に。そして、共感していただけましたら、みなさんも空を見上げてみてください。浮かぶ雲は、きっと段々になっていることです。

 もし、よろしければ、今回の詩と似た雰囲気の小説「空宙の歩行線(そらのほこうせん)」もご覧ください。

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