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嗚呼、詩よ
僕の音を持っていけ
やがて塵となるこの命を攫っていけ
そして星の瞬く間に
永遠に繋がれる音詩となれ
白紙の譜面が気づけば落ちている
水の味を教えてくれた
筑紫の中に
大冒険を語ってくれた
小さな丸石の中に
踏みつけた地面に水が滲む
単音はその足跡に宿る
一体これまで
どれだけの御仁が
その道を後にしただろう
演奏はすでにはじまっていた
落雷と噴火が高音を担い
雨と風が低音を担い
大地に立つ生命が指揮をとった
音は
壮大な宇宙にまで飛翔して
微細な粒子にまで縮尺する
生き物の歩みで
トテっトテっ
線は引かれる
演奏ののち観賞はきた
奏でた音を
皆が聴き忘れていた
せせらぎが細草の間を抜け
耳の穴を透き通るとき
息を吐き、
声を出す
フォウ
ハァ
ハ
フ
フォ
ハゥ
怪獣の白い煙が出たことに
皆は驚き
今度は忘れんと記録すれば
記号は描かれる
虚無を誰かが訴えた
演奏は一人では叶わない
観賞は一人では儚い
奏でる
聴く
発する
体内の音を拾い
体外の音を拾い
心内の動を感じ
心外の動を感じ
眼に広がる景色に気づく
景色に棲まう他者を知る
虚は変わらず
然し
中身は無でなかった
言笛を鳴らす
ピピー
ピピー
ヒョロロピー
リ ピピ―
リリリ
リピ
ピピ―ヒュ ヒュ
呼ばれた気がして
皆が集まれば
音符は並び出す
黒紙となった譜面に
僕は触れる
もう何も奏でずとも
聴こえずとも
発せずとも
朝空が夜空に変わるように
わかる
僕もいつか加わる日がくるのだろう
それまで大切に
譜面はポッケにしまっておく
この温もりを
忘れるまで忘れないでいよう
嗚呼、詩よ
僕の音を持っていけ
やがて塵となるこの命を攫っていけ
そして星の瞬く間に
永遠に繋がれる音詩となれ
音詩
2025年1月22日 執筆
著者 八坂零
掲載 芸術の星座
筆者からひとこと
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
いかかだったでしょうか。『音詩』
自画自賛となってしまいますが、個人的には書いてきた中でかなり好きな詩です(どこに投稿しても見向きもされなかったけれど……)。
言葉によって、譜面と歌詞を描いてみたというイメージがあります。
視覚詩で、音の部分は音楽の音符やト音記号の形に作っておりますので、横読みだけした方はぜひ、縦読みのPDFも見ていただきたいです。
私の詩がみなさんの心に、言葉としても、音としても、届くことを願っております。
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