『あおい よるの ゆめ』.クリーマ,ガブリエーレ・さとう ななこ訳.株式会社ワールドライブラリー
本記事では、ガブリエーレ・クリーマさん(さとうななこさん訳)の絵本『あおい よるの ゆめ』(発行年2015年 株式会社ワールドライブラリー)のレビューをしていきたいと思います。
左には想像力を育むことば、右にはゆびさき一つで遊べる楽しいしかけ、質の高い海外の絵本を取り扱う、株式会社ワールドライブラリーさんの選び抜かれた一冊。
空が暗くなってから。寝る前などにも。
自分の力で世界を彩っているような感覚になれる、まるで魔法の絵本です。
『あおい よるの ゆめ』のおすすめポイント!
『あおい よるの ゆめ』のおすすめポイント!

大人向けには、夜眠れない方や夜が好きで静かな感覚を味わいたい方。お子さんが生まれた方へのプレゼントなどにも大変おすすめな作品です。レビューもぜひ最後までご覧ください。
『あおい よるの ゆめ』のあらすじ
チューリップの花を咲かせ、空にお星さまを浮かべ、船を旅させて。
それらはすべて、こどもたちやあなた自身のゆびさき一つで。それは鮮やかな、あおいよるに見る素晴らしきゆめのよう……。
『あおい よるの ゆめ』を読んだ感想(魅力を語る!)
①:ゆびさき一つで楽しめる、世界を彩る「しかけ」の数々
しかけ絵本と言えば、やはり目玉は「しかけ」です。『あおい よるの ゆめ』にも、しかけがたくさん用意されています。
中でも目を光らせるのは、そのしかけすべてが「ゆびさき一つで楽しめる」という点です。
「ちいさな ゆびで」と表紙にもある通り、この絵本は0~2歳からが対象年齢となっています。一方で、中身は芸術作品と呼んでもふさわしい考えが含まれる、作りこまれた作品です。
特に私が素晴らしいと思った部分は「しかけ前と後の色彩表現」です。
今回は中身の一部も、絵本の紹介の目的に限りご使用いただけるとのことなので、実際に見ながらご紹介していきます。
『あおい よるの ゆめ』.クリーマ,ガブリエーレ・さとう ななこ訳.株式会社ワールドライブラリー
▲『あおい よるの ゆめ』チューリップを育てる場面のしかけ前
『あおい よるの ゆめ』.クリーマ,ガブリエーレ・さとう ななこ訳.株式会社ワールドライブラリー
▲『あおい よるの ゆめ』チューリップを育てる場面のしかけ後
いかかでしょうか。本当に素晴らしいとしか言えませんが、見どころを詳しくご紹介していきます。
しかけ前の色彩表現だと、そこには一見、何もないように見えます。この「一見、何もないように見える」というのが非常に重要で、しかけ部分はまわりの色と、はじめはまったく同じに見えるため、しかけ後の色がより鮮明に映る仕組みとなっているのです。
これは視覚機能がまだ発達していない0~2歳などのお子さんにとっては、とても親切です。また、私たち大人にとって、単調な色から多彩な色に変わるという現象は、感動につながるでしょう。
さあ、しかけ後ではどうなるのでしょうか。
しかけ後の色彩表現だと、青色の反対色となる赤やオレンジ(黄)の花を選んでいるというのが、センスが光る部分。目の慣れたところで突然、反対色が訪れることで読んでいるほうは驚きます。この驚きが今度は重要です。
前で語った「色彩の有無による驚き」と後で語った「反対色による驚き」、性質の違う二つの驚きにより、感動は一気に押し寄せてきます。
これが自分のゆびさき一つで作れてしまうのだから、本当に魔法のようです。
②:「しかけ」だけじゃない! 考え込まれた想像力を育む「ことば」たち
例えば、お子さんがいらっしゃる方なら、しかけに夢中になるお子さんを微笑ましく思いながら読んでほしい。一人で読むなら、どういう想いが込められているのか考えながら読み、ゆびを動かしてほしい。
私がそう強く願うのが、しかけだけじゃない『あおい よるの ゆめ』の考え込まれた想像力を育む「ことば」たちです。
①で語ったように、この絵本はまるで魔法です。
しかし、誰もが魔法を使えるわけではありません。導いてくれるのは、しかけのない左ページに書かれた温かくやわらかなことばたちです。
参考画像のページでは「チューリップを そだてよう。」と記されていますが、他のページにもほしをうかべたり、ふねをたびさせたりといった内容が記されています。そだてる、うかべる、たびさせる。とても温かくやわらかな、それでいて肯定的に物事を創っていくようなことばたちですよね。
「ちいさな ゆびで」それらを想像する(創造するといってもいい)体験は、こどもたちにとって大変価値のあるものでしょう。
当たり前のように表現されているのがこの絵本の素晴らしいところですが、これは大人にも言えることなのではないでしょうか。ことばを理解し、深く考えることができる分、もしかすれば、大人はこどもよりもこの想像する体験を得られるかもしれません。
芸術の世界では、よく優れた作品というのは、たとえその作品の意図や対象が決められていたとしても、それ以上に膨らんでいく作品だと言われます。
その感覚でいうなら、『あおい よるの ゆめ』はまさに芸術作品と呼んでもふさわしい考えが含まれる、作りこまれた作品であると私は思うのです。
③:眠れない夜に。すっと眠りに入れる絵本構成
この作品、最後には○○という展開で終わります。
○○の部分はぜひ、実際に絵本を読んでいただきたいのですが、表紙やタイトルからも受け取れる通り、夜を扱った作品です。
ガブリエーレ・クリーマさんの夜に似合う、温かみのある絵や色のタッチは、私たちをとても静かで、穏やかな気分にさせてくれます。
色というのは本当に不思議なもので、強く描こうと思えば濃く滲み出るものです。また、優しく描こうと思えば、うっすらと滲み出るものだと私は思っています。
ガブリエーレ・クリーマさんはどういう想いで色を描いたのか、考えながら見ることもおすすめです。
色から続くのは、絵本の構成。
魔法を使うのに夢中になっていると、ここは見逃してしまう部分かもしれません。複雑ではないかもしれませんが『あおい よるの ゆめ』はそのタイトルにふさわしい、夢を旅するような絵本構成です。
優しいことばと楽しいしかけにわくわくしながら、でも最後はふわっと地面に着地し、心地よい眠りにつきましょう。
『あおい よるの ゆめ』レビューのまとめ
『あおい よるの ゆめ』のおすすめポイント!
しかけ絵本『あおい よるの ゆめ』は、自分の力で世界を彩っているような感覚になれる、まるで魔法の絵本でした。
大人向けには、夜眠れない方や夜が好きで静かな感覚を味わいたい方。お子さんが生まれた方へのプレゼントなどにも大変おすすめな作品です。

みなさんも『あおい よるの ゆめ』という、不思議な魔法と想像力の世界をぜひ、ご堪能ください。そして最後はきちんと現実に戻ってきて、ぐっすりと快い眠りにつきましょう。
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