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みんなには、痛みがあるのでした。
古代も、昔も、今も、未来も、みんなみんな痛いのでした。
僕にはそれもないのでした。
理解することはないのでした。
それでいいと、最近は思っているのでした。
痛みが、みんなを、
特別だと証明するのでした。
誰かのせいにしたかったのでした。
けれどもすべて、僕のせいにしていたのでした。
弱さも、優しさも、全部無かったのでした。
うまく言うことは叶わないのでした。
狂しいのは本当で、それも嘘になって、何も口から出ないのでした。
そのうち、考えるのをやめろと言われるのでした。
僕は僕を想いつつ、みんなを想いつつ、
結局、誰も想ってはいないのでした。
最後には、人ではなかったのでした。
暗いのに明るい、奇妙な改竄が見えるのでした。
みんなにできることは、僕が消えることなのでした。
僕がいなくなれば、誰かのためにというのも無くなるのでした。
ずっと、ずっと、ずっと消えたいのでした。
それなのに、消えさせてくれないのでした。
どこかもう、誰もいないところに生きたいのでした。
そこでひっそりと、
苔の一部になりたいのでした。
風の音を気聞たいのでした。
空の冷たさん感じたいのでした。
涙は、出ないのでした。
世界があるようで無いからでした。
考えているようで無いようで、誰かにもらったものだからでした。
頑張っているのに、そのせい余計にみんなを狂しめるのでした。
頑張らないと、それはそれでみんなを狂しめるのでした。
僕には何ができるのでした?
教えてくださいでした。
それだけをやりたかったのでした。
やっぱり、
僕には穴が空いているのでした。
語尾は崩れて――
わかちえない痛みを、
特別だという証明書を使って、
穴に抜け道を創りましょう。
そしたら、勾玉が見えるでしょう。
トグルが見えるでしょう。
樹につく葉の一枚一枚が――
「真友たち」が、
見えた
でしょう。
わかちえない痛み、でした。
2022年8月4日 執筆
著者 八坂零
掲載 芸術の星座
筆者からひとこと
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
いかかだったでしょうか。『わかちえない痛み、でした。』
語り部は、人には生きるという痛みがあり、死ぬという苦しみ(狂しみ)があると思っていたのでしょうか。しかし、その痛みによって、そこから流れ出る血によって、人と人はつながっていると考えられることばたちです。
ですが「僕」は、そんな唯一のつながりすらないほど、薄く透明な存在だった。そのため、死ぬのではなく、消えてしまう。自然(苔・風・空)と一体化しようとしていく。
みなさんは自分を空虚だと思うときがありますか?
あまり多くを語ってしまっては、想像が膨らまないところですので、この辺で終わりといたしますが、一つ、考えていただけたら嬉しい部分を挙げるなら、
最初の「痛み」と「わかちえない痛み」、この痛みにはどのような違いがあるのでしょう。
その先で現れる最後の存在は何だったのか、ぜひ、感想がございましたらコメント欄などにお書きください。
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